ウールの先染め

Wooltex の工場はイギリスのかつて数世紀にわたり繊維製造の中心地として栄えた土地にあります。

伝統と技術革新が共存するこの土地に建つ Wooltex は Kvadrat が最も長きにわたり信頼してきたパートナーサプライヤーのひとつであり、天然ウールテキスタイルの製造を専門に行っています。Wooltex の技術責任者 Richard Brook 氏が効率的でサステイナブルな生産を実現するためのたゆまぬ努力と、自然が生み出す「ワンダーファイバー」の魅力について語ります。

Kvadrat との緊密な連携はビジネスにどのようなメリットを与えていますか？

Kvadrat のような大企業を顧客として持つことで、大きな営業やマーケティングの部門が必要なくなるなど、効率的な事業運営が可能になります。代わりに、機械や人材、トレーニングなど、特に Kvadrat のニーズに合わせて投資することができます。さらに、Kvadrat のビジネスには季節による変動がないため、年間をとおして生産量に大きな変化があまりありません。安定的で一貫した受注により、高い効率性を維持することができます。

Kvadrat とのビジネスは20年以上になりますが、全員が同じ目標を掲げ、その達成に向かって取り組んでいます。

Wooltex が地域の文化や経済で担っている役割について教えてください。
昨年、会社の工場の半径20マイル以内から購入した品物は約1,200万ポンド相当にのぼります。可能なかぎり地元で調達することで、地域経済の雇用創出につながっています。この地域の繊維産業はかなり衰退したため、私たちの果たす役割はとりわけ重要だと言えます。

私たちは地元のサプライヤーと極めて緊密な関係を維持してきました。ここでは小規模な事業が大きく依存しあい、乾燥業者、仕上げ業者、紡績業者の多くが距離にして半径30分以内にあります。そのほとんどが3、4世代続く家族経営で、代々の製造知識を受け継いでいます。

Wooltex のような企業の繁栄は地域の経済やコミュニティにとって好ましいことです。私たちはこの地域に根付く技術を守りたいという思いから実習生の受け入れを行っています。人材研修を非常に重視しています。また、ハダースフィールド大学や地元のテキスタイル・センター・オブ・エクセレンスとも緊密に協力しています。今年、Wooltex は国際貿易のカテゴリで栄誉ある「Queens Award for Enterprise」を受賞しました。

土地の地理的特徴について詳しく教えてください。
ハダースフィールドがイギリス有数のウール生産地として栄えているのは、この地の地形や気候のおかげだと言えます。この地に繊維産業が生まれたのは産業革命の時代です。周囲をペナイン山脈に囲まれたこの地では、大西洋からやってくる気象が山脈にぶつかり、山の西側（ランカシャー）に大量の雨をもたらします。綿栽培には湿度の多い気候が最適なため、19世紀から20世紀前半にかけてこの地は綿織り物の世界的産地に成長しました。一方、ハダースフィールドがある山の東側は雨が少なく、羊毛生産により適した条件が揃っています。さらに、岩がちなハダースフィールドの地形はウールテキスタイルの仕上げに欠かせない豊富な軟水をもたらします。

生産をより効率的で持続可能にするために行っていることは？
Kvadrat の事業はここ数年で飛躍的に成長しました。その中で、生産能力の向上を目指して、整経機と製織機に一貫して投資を行ってきました。新しい機械での生産は従来の 3 倍以上もスピーディで、効率性も大きく向上します。今後数十年にわたり操業する最新式の染色施設、イギリス初の毛糸仕上げ部門をはじめ、新しい機械類と工程への投資は現在ほぼ完了しています。その目的は、競争力の向上、Kvadrat のニーズへの対応力強化、さらに環境影響の軽減です。

新たに導入した機械は、エネルギーや水の消費量がはるかに少なく、例えば、当社の新しい染色機でウール 1 キログラム当たりに必要な水は、従来の 20 リットルと比較して、わずか数リットルです。使用する水の 85% はリサイクルされるほか、工場内の電力の一部は太陽光エネルギーでまかなっています。また、化学薬品や水を一切使用せずファブリックを仕上げる可能性も検討しています。さらに、Wooltex は実質的に廃棄物ゼロ企業として、全ての段ボール紙、油、プラスチック等をリサイクルしています。

Wooltex は、全員が環境保護を非常に重視し、全ての繊維の中で最も持続可能な繊維の一つのウールを専門にしています。ウールは天然で持続可能、さらに生分解性やエネルギー効率にも優れています。もし現代にウールが開発されたとしたら、まさに奇跡の繊維と呼ばれるでしょう！

ここ数年でウール生産に起きた変化は？それとも、従来と基本的には同じですか？
ウール生産の基本的な原則はほとんど変わっていません。ただし、現在使用されている機械類はスピードや効率性に優れ、コンピュータ制御されています。さらに、環境にもより配慮しています。この産業には伝統が深く根付いていますが、人々は変化や改善に優れた適応力を見せています。

持続可能性について工場が目指している目標は？
工場ではすでに ISO 9000 の認証を取得済みで、今年末までにさらに ISO 14000 を取得する予定です。今後もエネルギー使用量の監視を続け、水の代替源やエネルギー効率に最も優れた機械の検討を行います。建物自体にもますます気を配り、断熱材や LED 照明の設置を徹底しているほか、近隣の住民への配慮から騒音軽減に取り組んでいます（工場はこれまでと同様に従業員の家と隣り合わせに建っています）。また、初期段階ではあるものの、廃棄糸を活用するためのエキサイティングなプロジェクトを Kvadrat とともに実施中です。